Leica M Monochrom typ246 長期使用レビュー
2017/04/17
ライカM モノクローム typ246を入手して約半年が経ちました。
この半年での撮影枚数は9000枚ほど。
未だにその圧倒的な描写性能に息を呑むことが多々あるこのカメラ、魅力が少しでも伝われば、ということでレビューを書きたいと思います。
基本的な部分はM typ240のレビューに書いてあるので、そちらを読まれてからこのレビューを読んで頂けると幸いです(´ω`)
1.スペックについて
ライカ M typ240を踏襲しておりますが、ベースのボディーはM-P typ240です。
フレームセレクタレバーが復活し、バッファーが1GB→2GBと倍増しています。
フレームセレクタレバーの復活は嬉しいところです・・・が、使ったことはありません(´ω`;)
ファームウェアのアップデートと2GBへのバッファー増加のおかげで、かなり連射しても書き込みビジーで撮れない、ということにはなりません。
半年使っていて、連射する場面が多少ありましたが、そういった事でイライラさせられた事が無いです。
M9は5〜6枚連射すると30秒くらい撮れなくなることがしばしば、M240でもたまにありましたが、M-Pベースのバッファー2GBがここまで効いてくるとは、という感じです。
さり気なくMモノクロームであることを主張しているのがカッコイイ・・・!
M-P typ240との外見上の違いは、シュー部分に"MONOCHROM"の刻印が入っていること、軍艦部のLeicaのエングレーブが無いこと、黒色ボディーがブラックペイントではなく、ブラッククロームであることです。
ライカM Monochrom typ246アラカルトのサービスが始まったので、シルバーのボディーや、ブラッククロームでエングレーブ入り、といった事も出来るようになりました。
"一つだけ言える真理がある、「男は黒に染まれ」"(キリッ!)
本当はシルバーのボディーが良かったのですが、私が購入した2016年6月はアラカルトが始まる直前で、ブラッククロームボディーしか選択肢がありませんでした。
「黒ボディかー・・・」と思っていましたが、たまたま手持ちのレンズのアポズミクロン50mmが黒でして、このレンズとMモノクロームの相性が抜群。
結局はストラップとボディケースまで黒色にして、まっくろくろすけを楽しんでいます。
M typ240系はベース感度がISO200、最高感度がISO3,200、PUSHで6,400まで上げられます。
M Monochrom typ246はベース感度がISO320、最高感度がISO12,500、PUSHでISO25,000と高感度がすごく強くなっています。
そちらについては後述で詳しく述べさせていただきます。
2.高感度耐性・解像度
M typ240を使っていて唯一の不満は高感度耐性でした。
F1.4の現行Summilux系の開放の描写力が非常に優れているため、それに助けられる形でM typ240もオールラウンドに活躍することができていましたが、Mモノクローム typ246は夜間でも50mm F3.5のレンズや90mm以上の焦点距離のレンズを使おう、という気にさせてくれます。
Leica M Monochrom (typ246) + APO-Telyt-M 135mm F3.4
これまでのM型デジタルライカですと、真っ暗なカンファレンス会場で135mmの焦点距離を使うなんて、とてもじゃないけど考えられないです。
光量が足らないから、長い焦点距離のレンズ使用は諦めるか・・・といった事になりません。
この便利さは何物にも代えがたいものがあります。
Leica M Monochrom (typ246) + Som Berthiot Stellor 50mm F3.5 LTM改 ISO3200
「暗い?だったら絞り開けるか」から「暗い?だったら感度上げるか」へと変化。この便利さは凄いです。
M typ240ですと、ISO800くらいまでは実用ですが、そこからちょっとでも感度を上げるとノイズが気になり始めます。
モノクロ変換しても、デジタル特有の嫌なノイズが乗ってくるのでどう頑張ってもISO800が限界でした。
Mモノクローム typ240ですと「ISO1600? なんともないぜ」という感じになります。
何の躊躇もなくISO3200も使えます。私個人の感覚としてはISO6400までは余裕で常用出来ます。
Leica M Monochrom (typ246) + Summilux-M 35mm F1.4 ASPH. FLE
ライブハウス? なんともないぜ!!
ですが、ベース感度がISO200からISO320になってしまっているので、日中屋外、特に真夏ですと、かなり絞らないと最大SS 1/4000でもオーバーだよ、と警告が出てしまいます。
真夏の屋外でノクチ0.95の開放を使いたいのであればND16くらいは必要となってきます。
ベイヤーが廃されている弊害でもありますが、高感度の強さという恩恵があればなんてこと無いです。
Leica M Monochrom (typ246) + Noctilux-M 50mm F0.95 ASPH.
ノクチの開放F0.95とMモノクロームの高感度耐性があれば、どんな暗所でも撮れない被写体は無いと思えてきます。
3.階調再現性
Leica M Monochrom (typ246) + Summilux-M 35mm F1.4 ASPH. FLE
圧倒的な階調再現性、Mモノクロームの醍醐味です。
凄まじいの一言です。
ベイヤーが無くなるだけでここまで変わるとは・・・と、現像する度に驚かされます。
Leica M Monochrom (typ246) + Vario-Elmar-R 80-200mm F4.0
このバリオエルマー、レンズが曇っています。ブロンズ像の質感の再現性が凄まじすぎる・・・。
曇ったレンズはコントラストが落ち、発色が鈍くなります。
カラー機ですと、コントラストは後からなんとかなっても、発色は彩度を上げても厳しいものがあります。
モノクロ専用のM モノクロームtyp246は色が無いので、彩度に関する心配が無くなります。
コントラストが落ちることによって、暗部と明部を使わなくなり、センサー性能的に一番美味しい中間階調のみを使うようになります。
現像でコントラストを復活させてあげれば、曇ってないレンズよりも階調が豊かに表現できてしまう可能性があります。
Leica M Monochrom (typ246) + APO-Summicron-M 50mm F2.0 ASPH. ISO1600
ビンテージのアメセルMark VIのラッカーの禿げた質感がここまで美しく表現出来るとは・・・。
感度を上げていっても現像での粘りが凄いです。
ノクチ0.95を屋外で使って、かなりハイキーになっても現像でアンダーめにすることで階調が蘇ります。
M240でも暗部の粘りはかなり良かったですが、更に凄みを増し、明部の粘りに関してはMモノクロームの圧勝です。
Leica M Monochrom (typ246) + APO-Summicron-M 50mm F2.0 ASPH.
M240ではここまでキレイに木目が出ません。
RAWで撮影していても、M240をモノクロ変換したものはMモノクロームtyp246と同じ絵にはなりません。
質感の表現力が全然違います。
人間の肌も同様で、ポートレートを撮影した時はかなり気を使って現像しないと肌の部分が凄いことになりますw
Leica M Monochrom (typ246) + APO-Summicron-M 50mm F2.0 ASPH.
着物の質感が・・・ため息モノです・・・。
現像耐性は、実際に使って現像して頂かないと伝わらないとは思うのです。
私自信も実際にMモノクロームを手に入れるまでは、階調再現性が素晴らしい旨の評判に懐疑的でした。
しかし、使ってわかりました。
「MMはいいぞ」
Leica M Monochrom (typ246) + APO-Summicron-M 50mm F2.0 ASPH.
「Mモノクロームは解像度もカラー機より高い」という話も聞いていましたが、「同じ2400万画素なら変わらなくね?」と思っていました。
解像度の高さは真実でした。
1ピクセルごとのシャープさが全然違うのです。
ズームレンズが機構上使えないレンジファインダー機ですと、クロップせざるを得ない事があります。
M240で大胆なクロップをするとシャープネス的に破綻が見えてくる所があるのですが、Mモノクロームはそれが無い。
Leica M Monochrom (typ246) + APO-Summicron-M 50mm F2.0 ASPH.
結構大胆にクロップをしている1枚なのですが、それを感じさせません。
CCDのMモノクロームが出た頃から「アポズミクロン50mmとMモノクロームの相性は最高だ」と言われていました。
これも真実だと、Mモノクローム typ246を使ってハッキリと自覚しました。
Mモノクローム typ246の実力を完璧に発揮したいのであれば、アポズミクロン50mmも同時に入手すべきです。
この組み合わせは本当にお薦めです。
4.オールドレンズとの相性
Leica M Monochrom (typ246) + Som Berthiot Stellor 50mm F3.5 LTM改
じゃあ、オールドレンズとの相性は悪いのか?
いえいえ、全然そんな事ありません。
無茶苦茶相性が良いです。
色がなくなった事で、カラーの発色なんて気にしなくて良いのです。
Leica M Monochrom (typ246) + Carl Zeiss Jena Sonnar 50mm F2.0 for Contax
モノクロでの現像を前提で撮影しても、普通のカメラであれば現像時に一瞬でも、カラーの絵が見えてしまいます。
そこで萎えてしまったら、現像する気すら失せてしまいます。
Mモノクロームはそういった迷いを一切断ち切ることが出来ます。
Leica M Monochrom (typ246) + Komura 135mm F3.5 LTM
色を再現出来ないので、階調だけで戦うことになります。
現行のレンズはコントラストが非常に高いですが、センサー性能的に苦しい上下bitにもダイナミックレンジが被ってしまいます。
コントラストが浅めのものが多いオールドレンズは、前述の通り、センサーの一番美味しい部分に集中して情報を残す事ができます。
Leica M Monochrom (typ246) + Som Berthiot Stellor 50mm F3.5 LTM改
M240を使っていた時にもオールドレンズはいろいろと試しました
ですが正直な所、積極的に使おうという気になれませんでした。
お遊びでちょっとはオールドレンズを使うものの、結局はカラーの色乗りが良い、現代的な写りをするオールドレンズを使うことが多かったです。
Mモノクロームになってから、オールドレンズらしい写りをするオールドレンズを使うのが楽しくて仕方がないです。
Leica M Monochrom (typ246) + Carl Zeiss Jena Sonnar 50mm F2.0 for Contax
やはり、モノクロフィルムが中心だった時代のレンズは、モノクロ専用機で使ったほうが楽しめるという事なのかもしれません。
カラーでの曖昧な表現、というのが個人的に非常に苦手でした。
ですが、モノクロームでの曖昧な表現は非常に面白いです。
Leica M Monochrom (typ246) + Carl Zeiss Jena Sonnar 50mm F2.0 for Contax
Twitterで「Mモノクロームを使ってるとカラー機で撮った時の色がノイズに見える」という意見を見た時に笑ってしまったんですが、言わんとする事はMモノクロームを使っていると良くわかります。
情報を削ぎ落とすことで見えてくる別の側面があるのは真実だと思います。
5.総評
Leica M Monochrom (typ246) + Summilux-M 35mm F1.4 ASPH. FLE
モノクロセンサー搭載のカメラというのは、産業用カメラですと特別に珍しいわけでもありません。
ですが、民生用スチルカメラとしてはMモノクロームが現状では唯一です(かつてKodakが出していたようですが)。
色が表現出来ない以上、カラー機での撮影とは全く違ったアプローチで被写体を捉えないと良い写真は撮れません。
Leica M Monochrom (typ246) + APO-Summicron-M 50mm F2.0 ASPH.
「なんかイマイチな絵だけどモノクロに変換したら誤魔化せた」みたいな中途半端なモノクロの扱い方をしている人には全くお薦め出来るカメラではありません。
本気でモノクロームでの表現に特化してみたい、そう思う人しか買わないほうが良いかと思います。
モノクロ縛り、というのは使ってみると想像以上にキツいです。
Leica M Monochrom (typ246) + Summilux-M 35mm F1.4 ASPH. FLE
ニーズ的にもニッチ過ぎますし、カラー撮影はある意味モノクロ撮影も兼ねてしまうので、他のメーカーからモノクロ専用のデジタルスチルカメラが出ることはまずありえないでしょう。
ライカだからこそ出来る、というのはあるかと思います。
Leica M Monochrom (typ246) + Vario-Elmar-R 80-200mm F4.0
幸いな事に、Lマウント・Mマウントは歴史が古いので、モノクロが中心だった時代に設計されたレンズが多数あります。
こんな恵まれた環境でMモノクローム購入を迷っているのであれば買わない手は無いでしょう・・・w
全力でお薦め出来ます。
絶対に後悔はしないカメラです。
美しい灰色の世界を一緒に楽しみませんか?
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