Leica M9 長期使用レビュー

      2017/08/19

私は2012年の12月から2014年の1月まで、ライカM typ240に買い換えるまでの間、ライカM9スチールグレーを使っていました。
長らくM240をメイン機として使っていましたが、ライカMモノクローム typ246へ買い替え。
カラー撮影用としてα7IIをお迎えしたものの、撮影スタイルや色味に満足出来ず、ライカM9ブラックペイントを買い戻しました。

ライカM9が登場したのは2009年の9月、すでに7年前の機種になってしまいました。
外装違いのM9-Pが登場したのは2011年。その頃はまだ私は写真をやっていませんでした。

ライカM10の登場が噂される今、7年前の前の機種であるM9に魅力はあるのか?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、とても良いカメラなんですよ。
それを伝えることが出来れば、と思い、筆を執ることにしました。

 

1.スペックについて

今更書くまでも無いかな、と思いますが、触れておきます。
M8はAPS-Hサイズのセンサーだったので、レンズの画角が135版焦点距離換算でx1.33倍されてしまいます。
M9からは36x24mmのフルサイズセンサーとなり、フィルムライカと同等の画角となりました。
M8ではUV/IRフィルターを使用しないと、赤外線による色かぶりが発生することがありますが、そういった問題も克服。
しかし、センサーの腐食問題が発生しています。こちらについては、問題が発生した場合、ライカカメラジャパンにカメラボディを預ければ無償交換をしてもらうことが出来ます。

ファームウェアが1.204であれば、腐食対策済みセンサーに交換されている証です。

M8もM9も共にKodak製のCCDセンサーを搭載。
コダック製、という所に、フィルムカメラを愛用してきた方々には求心力がある所かと思います。
「M240はCMOSセンサーだからダメ、M9のCCDこそ至高」みたいな意見も見受けられますが、個人的には画像素子の種類は気になりません。
良いと思える絵が得られればそれで良いかな、と(´ω`)

M240系と違ってライブビューやEVFを使うことが出来ないため、必然的に距離計連動レンズを用いることになります。
Mマウント変換アダプターを使って目測撮影も、もちろん出来るのですが、実用性を考えるとイマイチかなと・・・。

 

M8.2にあったスナップモードは無くなっています。シャッタースピードは絞り優先AEとマニュアルSSのみですが、切り替えは非常に楽です。
撮影に本当に必要な機能だけ搭載し、○○モード、みたいなものは無く、被写体や撮影したい状況によって全て撮影者がセッティングを決めることになります。

オートが前提のカメラに慣れきっていると戸惑うかもしれませんが、ちゃんと考えて撮っていけばすぐに慣れてしまいます。
むしろ、○○モード、とかの使い分けのほうがめんどくさい、と思うようになるかと思います。

外観的にはM7に似ています。
M240以降は採光窓が無くなり、ブライトフレームがLEDになりますがM9までは伝統的なお顔をしています。
ライカの赤バッジが嫌いな方はM9-Pを選ぶのが良いかと思います。

 

フィルム巻き戻しクランクが無く、肩の部分は段差が付いてます。
M8系とM240系(typ262とM-D除く)はこの段差が無くなるんですよね・・・
個人的にはこの段差があるルックスのほうが好きですw

撮影感度はベースがISO160、最大でISO2500ですが、実用はISO400が限界かと思います。
日中屋外はISO160、屋内や夜間はISO400で、といった使い方になるので、屋内や夜間ではF2.0、出来ればF1.4のレンズが欲しいかな、と感じるかと思います。
フィルムで使っていたとしても、ISO400より高い感度のフィルムを詰め込む事は稀かと思います。
そういった意味で、フィルムカメラ的な使い方が要求されます。

 

操作体系は非常にシンプルです。通常使用であれば、MENU内のSDカードフォーマットとレンズ選択、ISOボタンでの感度設定くらいしか触ることは無いかと思います。
M8はレンズ検出が6bitコードを用いないと出来ませんでしたが、M9からはレンズに6bitコードがない場合に手動選択出来るのでより実用性が増しました。

 

先日、ズマロン28mm F5.6が復刻しました。
M8用のNEWズマロン28mm対応のファームウェアはまだ登場していないようですが、M9用は登場しています。
早速ファームウェアをアップデートしてみますと・・・

 

ファームウェアが1.210となります。
こうなってしまうと、センサー腐食対策済みのM9なのか、見分けが付かなくなってしまいますね・・・。
しかし、7年前のボディにも関わらず、新しいレンズに対応してくれるというのはありがたいことです。

 

Leica M9 + APO-Summicron-M 50mm F2.0 ASPH.

撮れる絵は非常に素晴らしいのですが、背面液晶はかなり残念な出来栄えと言わざるを得ません。

 

上記の絵を撮った際に手持ちのiPhoneで背面液晶を撮ったのてすが、こんな感じになります。
ガラケーのカメラで撮ってガラケーでその絵を確認した時くらいの画質、というと分かりやすいでしょうか・・・。

露出の確認程度には使えますが、本格的にプレビューしながら撮影したい、という人には向かない液晶です。
ある意味、液晶を確認する気も失せるので、背面液晶の無いライカM-D的な使い方が捗ります。

ただ、液晶が有ると無いでは雲泥の使い勝手でもあるので、撮った絵をその場で確認できるだけでも十分と言えるでしょう。
今あえてM9を手にするのであれば、これについては覚悟をしておいたほうが良い所ではあります。
が、繰り返しますが、撮れる絵は非常に素晴らしいです。

 

2.得られる絵について

とても個性的な絵になります。
この色味が好きか否か、はライカを使う上で重要なポイントとなるかと思います。

 

Leica M9 + Noctilux-M 50mm F0.95 ASPH.

一言で言うと、華やかな色、でしょうか。
α7IIα7RIIは非常にリアルな色を見せてくれます。
ライカはM240もしかり、かなり彩度が高い感じになります。

現実を見たままに近い色味で撮りたいなら、ソニーのα7II系が良いかと思います。
ライカの描写は絵画的というか、目で見たより華やかな雰囲気になります。

 

Leica M9 + Summilux-M 35mm F1.4 ASPH. FLE
原色系、特に赤色は飽和しがちです。青色、黄色も見ての通り、かなりキツめに出ます。この辺りでM9に対する好みは別れるかと思います。

私の本格的なデジカメ運用デビューはライカM9だったので、色彩感覚がかなりライカに染め上げられています。
α7RIIもα7IIも、色が気に入らず、サブ機として定着しませんでした。

ですがM9のこの色、これが欲しかった!
まごうことなき、M型デジタルライカの色です。

画素数は1800万画素と、2016年現在でも十分実用に値する画素数です。
この色が好きになれるか、それがM9を運用していく上でのポイントとなるかと思います。

 

3.何故今M9なのか

ライカM10が登場しようとしている今、何故M9なのか。

まず最初に、M型デジタルライカとしてはかなりの高コストパフォーマンス機となってきた事が挙げられます。
ニコンのD4やキャノンの1D系のフルサイズフラッグシップ機の中古と比べても、そこまで高価ではないレベルにまで価格が下がってきています。

常時潤沢な中古を揃えていてくださるマップカメラさんですと、高いようにも見えますが、マップカメラさんは中古で1年保障が付くのでやむ無しです。
むしろ、保障が付くことを考えれば割安とも言えるかもしれません。
保障無しの中古店を見ていただければ、ニコキャノフラッグシップ機との相場がそこまで大きく違わないというのはおわかり頂けるかと思います。

 

Leica M9 + Noctilux-M 50mm F0.95 ASPH.

フィルムの機械式カメラと違い、電子制御のカメラは故障したらメーカー以外での整備は困難です。
新品が払拭し、中古でしか手に入らなくなったデジタルカメラは使用できる期間が自ずと決まってしまいます。
整備を期待してM9が使用できるのもあと10年が限界かと思います。

 

Leica M9 + APO-Summicron-M 50mm F2.0 ASPH.

M8系もM9系もM240系も、それぞれに描写の個性があります。
まるでフィルムを選ぶかの如くです。

フィルムの種類も日々減ってきています。
デジタルカメラも同じように、いつまでも有るものでは無いのです・・・。

 

Leica M9 + APO-Summicron-M 50mm F2.0 ASPH.

今しか味わえない物であれば、今試すしかありません。
シャッターチャンスも同様に、今その瞬間にしか訪れません。

M9は常に触っていたくなるほど、物としての質感が優れています。
常に触っているからこそ、出会うシャッターチャンスも増えます。

 

Leica M9 + APO-Summicron-M 50mm F2.0 ASPH.

一癖どころか二癖、三癖もあるカメラであることは間違いないです。
特に屋内でのホワイトバランス制御は難しいです。
現像の手間もM240系と比べるととてもかかります。

ですが、RAWデータに残っている情報量はとても多いため、Lightroomの使いこなしさえ出来れば、現像の幅はとても広いです。

 

Leica M9 + Noctilux-M 50mm F0.95 ASPH.

実用性で言えば、ニコン、キャノンのフラッグシップ機の中古に最新のレンズを付けるほうが高いのかもしれません。
しかし、私にはそれらの重たい機材を運用する体力がありません。
ライカMシステムの小型軽量さは、言わずもがなです。

どこに行くにしても持っていこう、と思えるサイズ感がそこにはあります。

 

Leica M9 + Noctilux-M 50mm F0.95 ASPH.

娘さんが生まれ、一緒に出かけるようになり、尚更カメラシステムは小型である必要性が高まってきました。
持ち運ぶ荷物が増えたため、カメラ側の重量を減らさざるを得ません。

以前はボディに取り付けた以外にも交換レンズを2〜3本持ち歩く事が多かったのですが、最近はMモノクロームに1本、M9に1本のみで、交換レンズは一切持たないスタイルになりました。

 

Leica M9 + Noctilux-M 50mm F0.95 ASPH.

M9はライブビューやEVFが使えないという仕様上、M240系と違ってズームレンズという選択肢があり得ません。
そこに交換レンズを持ち歩かないというスタイルは、機材選択に対する迷いを一切捨てる、という潔さがあります。

今取り付けているレンズで全てをこなす、そのためにはどのような工夫をして撮影すれば良いのか。

 

Leica M9 + Wollensak Velostigmat 2inch f/2 (50mm F2.0) LTM改

そうなってから、同じ焦点距離のレンズを使っていても、撮れる絵の幅が広がったように感じます。
シンプルな機能のカメラにはシンプルなレンズ選択が良いのかな、と。

私の写真撮影は50mmの沈胴ズミクロンから始まりましたが、色々な焦点距離を巡り、原点回帰的に50mmの使用頻度が激増しています。

ライカM9はM240系に比べて広角レンズでの周辺色被りに弱いです
そのデメリットを受けない50mmレンズをM9で運用するというのは、カメラの弱点を感じさせないという意味では正解なのかなと感じます。

幸いなことに、Lマウント、Mマウントには把握しきれないほどの50mmレンズが存在し、果ては他マウントから改造された距離計連動レンズという世界もあります・・・。

 

4.総評

Leica M9 + APO-Summicron-M 50mm F2.0 ASPH.

Mマウントは事実上のユニバーサルマウントと化しているので、少なくとも私達が生きている間は、レンズは使い続けることが可能でしょう。
ですが、デジタルカメラボディはナマモノです。

本格的にM9を運用できる期間の半分近くが過ぎ去ったのではないか、と思います。
得られる絵も唯一無二、使える期間も限られているのであれば、今使うしかないでしょう。

ライカM9はカメラとしての完成度は極めて高いです。
60年以上続くM型ライカのシステムで、フィルムをデジタルセンサーに置き換えただけ、という潔いボディです。

この記事が、その魅力を味わいたいと思っている方の後押しになってくれれば、と思います(´∀`)

 

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