レクタフレックス 1300 The Rectaflex Standard Series 25000

      2017/03/08

イタリアの一眼レフカメラ、レクタフレックス 1300を手に入れました。
1947年からイタリアに存在したRectaflex S.p.A.社が製造していましたが、1953年に倒産、その後、リヒテンシュタイン公国の皇太子から支援を受けて後継機が1956年から少数製造されています。
概要はWikipediaのレクタフレックスの項目に簡単に纏まっております。

 

非常に魅力的なレンズがラインナップされており、メーカーとしては、ガリレオ、フィロテクニカ、ツァイス、フォクトレンダー、シュナイダー、ローデンシュトック、シュタインハイル、キルフィット、シャハト、アンジェニュー、ベルチオ、ボイヤー、ルーセル、OPL、エルギート、などがあります。

 

探してもそうそう見つかるカメラではないんですが、某所にはたまに入るようで。
某所に行った時に現物を見てそのお姿に一目惚れ。
次に行く時に買おう・・・と思っていたのですが行く機会がなかなか無く。
色々とご縁がありまして、なんとか手に入れることが出来ました(´∀`)

 

早速ボディーを見ていくことにしましょう。
イメージとしては、バルナックライカにミラーとペンタプリズムが入ったようなカメラとなります。

 

シャッターダイヤルは引っ張り上げて回転させるタイプで、バルナックライカと同じです。
1/25の時に、背面にあるダイヤルを動かすことでそれ以下のシャッタースピードが使えます。
高速シャッターを使わない時は低速ダイヤルは0に合わせておかないと、意図したシャッタースピードで撮れないため注意が必要です。

 

詰めているフィルムの種類や感度の覚えを入力できるインジケーターがあります。
露出計などは内蔵していないため、完全に飾りです。
Vac、ELはスピードライトの種類を選択するものですが、ストロボ撮影をすることは無いでしょうし、実用上は飾りです・・・。
接点は前面左側に付いています。
3と5の数字の間の赤丸は、シリーズ25000の最初期のものには付いていません。

 

撮り終わった後のフィルム巻き戻しはノブで行います。
引き出すことが出来るのはバルナックライカと一緒ですが、その機構がバルナックライカよりちょっと凝っています。

 

巻き戻し時は当然ながら逆回転ロックを解除します。
ノブをRの文字に被せる側に動かすとロックが解除されます。

 

フィルムカウンターの初期値合わせは手動となります。
フィルム送りとシャッターチャージノブは、バルナックライカと回転方向が逆です。

 

シリーズ25000はシリアルナンバーが25600から始まっているのですが、この個体は314台目とかなり初期のものです。
シリーズ25000なのは間違いないのですが、シリーズ20000Bの特徴であるアイピース周りの文字が残っているという・・・。
もしプリズム部分の外装だけ20000Bから持ってきたものだとすれば、頭頂部にPATENTのエングレーブがあるはずなのですが、それも無い。
シリーズ25000で頭頂部にPATENTの文字が無くなるのは後期らしく・・・(徐々に無くなっていくらしいので、初期のものでPATENTのエングレーブが無いものがある可能性もあります)。
ミステリアスな個体です。

 

裏面の雰囲気はコンタックスに似ています。

 

左側に見える穴2つはストロボ用の接点です。
プリズムの突起を最小限にまで抑えたデザインに強く惹かれます。

 

マウントはバヨネット式のレクタフレックスマウント、脱着はプリズム右側の突起を押して行います。
マウント部右側の凸、がプリズム右側の突起を押し込むとへこみます。
ここで固定することになるのですが、ライカMマウントのようなバヨネットとは違い全回転します。

 

スクリーンにはスプリットのようなものが入っています。
当時としては画期的だったようですが・・・、これが無い方がピント合わせしやすいような気もします(´ω`;)

 

F2.0のレンズ開放で覗いたファインダー。
全体的に暗く、特に四隅はかなり光量低下します。
だが、これがいいんですよ・・・w

 

初期の一眼レフカメラですので、クイックリターンミラーなどといった便利な物は搭載しておりません。

 

シャッターボタンを押し込んでいくと、押し込み量に従ってミラーが上がっていき・・・。

 

ミラーが上がりきるとシャッター幕が走ります。
ボタンを離すと徐々にミラーが下がっていきます。
一眼レフカメラの弱点でもあるミラーショックがありません。
PENTAX SPをよく使うのですがミラーショックに悩まされておりました(1/30で明らかにブレの影響が絵に出る)。
それが一切無いのが素晴らしい・・・。
シャッターボタンを押し込むと、徐々に視界がブラックアウトしていく様子は非常に幻想的です。
・・・が、動体を取ろうと思うと、ボタンを押し始めてから視界がどんどん消えていくので結構難しいです。

 

裏蓋のノブを起こして回転させると底+裏蓋が外れます。

 

左側に黄門様の印籠なステッカーがありますw
正三角形の頂点にあたる箇所に切り欠きが入っており、これはフィルムにも残るため、レクタフレックスで撮影されたフィルムだということが直ぐにわかります。
ハッセルっぽくてカッコイイですねw

 

底部の彫刻がめちゃくちゃカッコイイ・・・。
このモデルには"Le Reflex Magique"の文字がありません。
右側の"Director Products Corp."の刻印はアメリカの輸入業者の名称であり、これがあることより、米国向け個体であったことが確認できます。
さらにプリズム頭頂部に"PAT.USA 2,569,516"の刻印がある場合は、米軍に納められた個体となります。
ネジが2つ欠けてしまっていますが、ここはスローガバナーを隠すための箇所ですので、特に問題はありません。

 

ちなみに、底の蓋を外すと、金メッキされたギアと、その軸受のルビーが入っているという狂気の作り込みがなされています・・・。
ググるともっと鮮明な写真は出てきます。
機械式腕時計に 8Jewelsとか書いてあったりしますが、カメラの内部でそれをしれっとやってしまうところが凄いですね・・・。

 

専用のスプールには"RECTAFLEX ROME"の文字が。
底部のシリアルナンバーとトップカバーのシリアルナンバーが13ズレています。
最初は「ニコイチか・・・?」と思ったのですが、にしても13のズレの個体が偶然集まることも珍しい・・・。
色々調べた所、トップカバーと底面のシリアルが14ズレている個体、20ズレている個体が他に確認できました。
n=3しかサンプルが無いですが、こういうものなのかもしれません。
同一ロットの部品で一番すり合わせの良い物同士を組み合わせてる、とかなんですかね・・・。

 

底蓋には圧板が付いてます。
底部には各国のPATENT表記が。

 

レンズは実絞りですので、撮影時はファインダーが相当に暗くなります。
日中からISO400のフィルムを詰めると、F8とかF11で撮らざるを得なくなりますが、そうなると相当フレーミングがし辛いです。

ボタンを押しつつレンズを正ネジ方向に回転させ、赤色の指標を合致させるとレンズが外れます。

 

レンズはドイツの雄、シュナイダー・クロイツナッハのXenon 50mm F2.0です。
レクタフレックス用のレンズとしては比較的数があるようですが、当時のレクタフレックス用標準レンズとしてはかなり高価なものとなります。

 

レクタフレックス用のXenon50mmはF2.0が2タイプとF1.9のものがあります。
このレンズはSTREXという型番になります。
ライカもSBLOOやらSBOOIなどといった5文字の型番が付いていますが、レクタフレックスにもあります。
STandard REctaflex Xenonの略でSTREXとなります。

 

絞り羽根は15枚。
さすがです。

 

フィートとメートルが併記されており、被写界深度目盛もあるためとても使いやすいです。

 

最短撮影距離は75cm。
専用フードを用意すると、絞りリングの突起を使ってプリセット絞り撮影が可能となるようです。

 

レンズ刻印のフォント、カッコイイです・・・。

 

マウントとの接触面右側に見える穴と、ボデイ側マウントの凸部が組み合わさることでレンズが固定されます。
ピントノブの裏側に刻印があるのですが、これが何を意味するかはまだ解読出来ていません。
ライカのレンズのように、何かしら意味があるはずです。

 

純正キャップは手に入らず、大きめの蓋の裏側に植毛紙を貼り付けて内径を調整してます。

 

純正のM42レンズアダプターが存在しており、これを使うとM42マウントレンズも使うことが出来ます。

 

色が特殊なM42のタクマーを装着するとこんな感じに。

 

EBCフジノン19mm F3.5を付けるとこんな感じになります。
レクタフレックスにこのレンズを付ける人はまず居ないのではないか・・・と思う組み合わせです。

 

Rectaflexでググるとお分かりいただけるかと思いますが、ネットには殆どこのカメラの情報がありません。
イタリアからこの本、"RECTAFLEX THE MAGIC REFLEX / Marco Antonetto"(原題:LA REFLEX MAGICA)を取り寄せまして、熟読している最中です。
本当はイタリア語版で読みたいのですが、イタリア語は全くわからないので、英訳版を手に入れました。
日本カメラ博物館のライブラリーには収められていないそうです。

 

全261ページで、写真も多く読み応えがあります。
ライカ関連の書籍は数十冊集めていますが、やはり書籍に勝る情報源は無いですね。

 

本家レクタフレックス社が倒産した後にリヒテンシュタイン公国で製造されたレクタフレックスリヒテンシュタイン。
このエンブレムが物凄くカッコイイ・・・。
いつか手にしてみたいものです。

 

イタリアかー、って思ってたらロードバイクもイタリアメーカーでしたのでツーショットを(エントリー機ですので台湾製造ですが)。
イタリアレンズを付けて、ロードもカンパニョーロで統一するとイタリア感満載な装備で写真ポタリングが出来るなぁ・・・とか色々想像するだけでも楽しいですね。

レクタフレックスは、お世辞にも使いやすいカメラとは言えません。
個人的には実用に耐えうる限界まで不便なカメラです。
ただ、モノとしての作りが抜群に良いため、触っていてとても楽しいのですよ。
ライカと同じですね(´ω`)

ボディもレンズもアクセ類も、探した所で何処にも無いマウントではありますので、気長に楽しんでいきたいと思います。

試写その1
試写その2

 

 - Rectaflex, カメラ・機材, ボディ ,