オールドレンズはもう古い! 魅惑の産業用レンズ

      2016/12/30

最近は圧倒的にオールドレンズブームです。
古いレンズ固定式カメラからレンズだけ取り出して別のカメラレンズの鏡筒に埋め込んだり、マウントを改造したり、アダプターを購入したりだとかして遊ぶ方がとても多いです。
昔から無かったわけでは無いみたいですが、レンズ交換式のミラーレスデジタルカメラが登場してフランジバックの制限も少なくなったので、レンズの需要が増し価格高騰しております。
正直、オールドレンズは写りが甘い物が多いです。
ただ単に、性能が悪いだけなんですが。
それをレンズの味だ! とか言って使うのもなかなかに乱暴な気もします。
撮影者の意図が一番介入するピント面はしっかりと写り、意識の範疇外となっていく周辺に向けて存分にレンズの個性を発揮してくれるレンズ・・・、それが本当に楽しいオールドレンズだと思います。
そんな"オールドレンズとして優秀"なものはとても有名なので、レンズグルメな方々はとっくに殆どを試してしまって居ることでしょう。
その他の有象無象を色々使ってみても、結局は全面の写りがただ甘いだけで気に入らないとか、本当に泥沼化してるのではないかと思います。
私もその一人なのですがw
そんな方々に新たな沼を紹介してみたいと思います。
それは産業用レンズです。
1.そもそも産業用レンズって?
 最近の工業製品の製造工程は機械化が進み、部品から組み上がるまでが全自動なんてものもあったりします。
そんな時、人間の目の代わりに監視を行うために産業用のデジタルカメラとレンズが使われます。
キズが無いか、だとか、異常が無いか、だとかを画像処理して、良品と不良品を選別したるするのです。
 その他にも工場の監視に使ったりなど、適用範囲は広いのですが、民生用レンズとは違った環境で使う物のため、仕様が特殊だったりします。
 当然、現行レンズですのでピント箇所の写りは抜群です。ボケなどは、産業用途で芸術写真用ではないのでかなりのクセがあったりします。
2.民生用レンズと何が違うの?
 工場内は屋内ですので、太陽光のある屋外よりも光量が少ないです。なので大口径のレンズが多かったりします。
 民生用のレンズは、無限遠ピントの時に最高性能を発揮できるように設計されています(マクロレンズは近接撮影用なので、近接時に性能が出るよう設計されています)。公開されているMTF曲線なども、特に記述が無ければ無限遠ピントでの性能値です。
 産業用のレンズは、無限遠方の撮影をすることが殆ど無いので、ある程度の至近距離で最高の性能が出るように設計されているものが多いです。
 民生用レンズは絞りリングにクリックが有るのが普通ですが、産業用レンズは無断階絞りの物が多いです。
 民生用レンズは絞りリングやピントリングを固定する機構がない場合が殆どですが、産業用レンズは絞り・ピントリングを固定するネジが付いていたりします。
3.産業用レンズのマウントは?
 Cマウント、CSマウント、ニコンFマウント、M42(プラクチカ)マウント、M39(ライカL)マウントなどが主流です。
 アダプターも豊富ですので、普段我々が使っているカメラ用のマウントに変換は容易に出来ます。
 CマウントやCSマウントレンズでしたら、マイクロフォーサーズのボディーがイメージサークル的にピッタリです。
 その他のマウントの場合は、APS-Cやフルサイズのミラーレス機で楽しめてしまいます。
4.どんなものがあるの?
 面白そうなものをいくつか紹介してみます。
 産業用レンズは大口径が多く、F値が1.4なんて割と普通なんですが、このレンズはなんとF0.85です。圧倒的なボケが得られそうです。
 焦点距離は25mmと50mmがあり、超高感度カメラと組み合わせて夜間屋外の監視に使われたりするものです。
 こちらはF0.95。m4/3のノクトンやライカのNoctiluxと同等のハイスピードレンズです。
 F0.95だと八雲電子さんのレンズが楽天市場などで買えたりもします。
 アンジェニューのバカ高いくせに甘々なCマウントの50mm F0.95なんかを買うくらいだったら、これを買うほうが断然コストパフォマンスが良いと思います。
 日本のメーカーさんも産業用レンズを作っています。TAMRONだとか、Fujiだとか、Tokinaとか、RICHOだとか、挙げだすとキリがないですね。
 興和光学さんは昔プロミナー銘のレンズを作っており、一時期は民生用を辞めていたのですが、最近マイクロフォーサーズ用にプロミナー銘で緑色のミリタリーカメラっぽい色のレンズを販売しています。
 これはそんな興和光学さんのテレセントリックレンズです。
 テレセントリックレンズって? とお思いの方も多いでしょう。詳しくはこの辺をみると分かるかと思います。すごく簡単に言うと、超すごいマクロレンズです。
 デジタルカメラになってから、像面側(センサー側)のテレセントリック性は重要視されていますが、これは対物側がテレセントリックなのです。
 各社さん、普通にテレセントリックレンズはラインナップにありますが、国産メーカーさんを代表して興和光学さんのを紹介してみました。
 産業用にもあるんです。しかもFマウント、M42マウントやライカLマウントで!
 ツァイスレンズはコシナでラインナップされているものと同じものがあります。絞りリングやピントリングにロック機構が付き、産業向けになっています。最近、民生用はいくつかディスコンになっていますが、こちらは産業用ですので製造は続くようです。
 シュナイダーやローデンシュトックは、通常ですとライカLマウント用のオールドを使うしか無いのですが、産業用向けに現行レンズがLマウントで売られているのです。もちろんライカで使うためのものではないので距離系連動はしません。ですのでLVやEVFでしか使えまえん。
 大判用レンズや引き伸ばし用レンズは現行で買えなくも無いのですが、ピント合わせ機構などに無理があるので産業用を使うほうが撮影に使うには現実的なのです。
5.買うときに気をつけることは?
 レンズのスペック表にはイメージサークルサイズが書かれています。自分の使いたいカメラのセンサーサイズに適合しているかの確認は必須です。でないと四隅がケラれてしまいます。
 あと、使いたいカメラのセンサーサイズ、画素数から計算できる画素ピッチを満たしていないと、カメラ側のセンサー性能を発揮できません。産業用カメラは未だに30~200万画素が一般的ですので、民生用の1000万画素オーバーのカメラで使うなら高画素対応のものにしたほうが良いです。
 あとWD(ワーキングディスタンス)がスペックに必ず記載されています。これはピント合わせが可能な距離です。レンズよっては無限遠が出なかったりするものもあります。無限遠でピントリングが止まらず、オーバーインフィニティまで回るものも少なからずあります。産業用レンズは一度ピントを合わせたらまず弄らないので、民生用のように使い勝手良くは出来ていません。フランジバック誤差を許容するためにそのようになっているのかと思います。
6.どこで買えるの?
 これが一番の問題です。殆どのメーカーさんは、個人ユーザーに直で販売はしていないと思います。個人で買うには相当ハードルが高いです。
 物によっては楽天市場で売られていたりするので要チェックです。
 監視カメラに使ったりもするので、秋葉原へ行けば店頭で買えたりもします。
 通販ですと、秋葉原のユニエル電子さんが通販をしているので個人でも買えるかもしれません。
 以前はビックカメラの通販でも売ってたりするので、欲しいものがあれば検索してみると良いかもしれません。
7.他に面白いものは無いの?
 エドモンドオプティクスさんはレンズエレメントそのものの販売や、被写界深度測定用のテストターゲットや解像度・ディストーション評価用のチェックシートを売っています。
 開発者が本気で使うものを販売しているのでどれも高額です。個人で買うのはキツイかと思います。
 開発者の方々がどんなものを使用しているのか、どういうことを知っているのかというのを勉強するためにも、サイト内のコラムだとかが参考になるかと思います。
 今回はレンズに限って書いてみましたが、産業用カメラというものも恐ろしくマニアックです。
 PENTAX 645Dの赤外線撮影専用機があったりだとか、18bit RAWで撮れるカメラだとか、2億5000万画素のAPS-Hセンサーだとか凄いものがあります。
 民生用ですと、モノクロセンサー搭載機は現状ライカMモノクローム系が唯一ですが、産業用じゃモノクロセンサーなんて当たり前だったりもします。
 また機会があれば色々紹介してみたいと思います。

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